最終話
闇の宇宙と点々とある星々。
それを見渡せるテラス。そこに宇宙を見渡す忘却の旋律とアルコトナイコトインコ。後ろには豪華な椅子に座ったモンスター・キング。両脇には扇子を持った女性の猿人。
「20世紀に、大きな戦争がありました。」と忘却の旋律。
「大きな戦争はいっぱいあったろ。」とアルコトナイコトインコ。
「それは、人間とモンスターとの全面戦争でした。」
「歴史の教科書には載っていないな。」
「言葉では到底語りきれない激しい戦いの末、勝ったのは、モンスター達の方でした。」
「アルコトナイコト。」
「もういい。茶化すな。」とモンスター・キング。
「月日は流れ新世紀になりました。」
宇宙に一筋の光。
「そして、人々はあのメロディーを忘れていったのです。」
ボッカが大地へ降下していく。
最終話(白・黒) 『それでも旅立つ君の朝』(黒・白)
眩く照らす太陽。
砂漠。置き去りになった戦車の影にボッカが倒れている。気が付いたボッカが見たのは小夜子の幻。と、戦車の上にサングラスの男の若者。
ジープで移動する二人。ありがとうと言うボッカに「たまたま通りかかっただけだ、たまたまね。」と彼。
腕の聖痕をみて、メロスの戦士? 前にどこかでと言うボッカに、知ってるかい、
「二世を倒して、今のモンスターキングが三世を継承したとき、あの二十世紀戦争は起こった。」
辺りが赤と火と悲鳴があがり、ジープの後ろには忘却の旋律。
「そのとき、彼女は新たな忘却の旋律となってしまった。」
「そう、忘却の旋律は、今のモンスターキングが作った幻なんだ。」
「ボッカ・セレナーデ、最後のメロス。」「もう君に仲間はいない。」サングラスを外す彼。「ソロ…」と言うボッカ。ジープは砂漠から草原に入ろうとしている。向こうには山。
ビキニの女の子達の牧場。ビーチバレーをしている。あの人たちはとボッカ。「自然と戯れ、自由に生きる少女達さ。」とソロ。と、車内にあった時計に、この時計だめだといい壊すソロ。君はホルの生贄になったはずではと言うボッカ。とそこにアルコトナイコトインコが登場。「ビー、その言葉、ビー。」と言う。なんだこのインコとボッカ。(そういえばボッカとインコが出会ったのは初めてか)と、あれを見てとソロ。
前方から台車に群がる例の少女達と、その台車に立つひときわ目立つ少女。「いいだろ、あの細い腰。芸術品だ。」「ここ、美少女牧場で作られた、ピーだよ。」とソロ。ボッカらを見て、男の子よ、汚い格好、先輩の卒業を見に来たの? これからモンスター様に召されるの。と彼女らは言う。ピーって生贄ことかとボッカ。すると彼女らは、変な事言わないでと言う。君達をモンスターの生贄になんかさせないと言うボッカに。私達は普通の人たちと違うの、私達は選ばれたの、と彼女ら。
★とそこでボーリングでストライクが決まるカット。
ソロが先ほど壊した時計をなでながら、ボッカにモンスターキングからメッセージがあると言う。「すでにピーは、自らの意思で志願する選ばれた者たちだ。この幸せな社会を壊す、どんな理由が君にある。」「君に直接会って見せたいものがあるそうだ。」「穴の下で待ってる。」とソロは言い残し、ボッカをジープから降ろし行ってしまった。
ふと背後に忘却の旋律を感じるボッカ。だが後ろを向くと消える。するとボッカの背中に忘却の旋律。「お願い、…。」と言って忘却の旋律は消える。
向こうで歓声。少女達が建物の扉の前に集まっている。牧場から扉の中へ入っていくひときわ目立つピーを送り出すほかのピー。
ボーリング場。ボーリングをしているたまころがし。「ちょい重いんだよね。」とたまころがし。わあすごい、こうなっているんだと先ほどのピーが来る。歩行者が渡っている信号。たまころがしに会い、モンスター様の世界は素晴らしい、この日が来るのをずっと待っていたと言うピー。黄色信号が赤信号の点滅に変わる。学校ではその意味について教えてくれた? とたまころがし。はいと答えるピー。顔を近づけキスしようとするたまころがしに、ピーがクスリと笑う。どうしたのと聞くと、さっき見た少年を思い出すとわらっちゃうんです、だって私が本当に食べられると思っていたみたいなんですと言う。体を撫で回すたまころがし。永遠の存在になるにふさわしい美しさを身に付けろと教えられてきましたとピー。たまころがしが足にキスをすると悶える。
ボーリング場の近くまで来たボッカ。とそこに悲鳴。帽子を犬に噛み付かれ、ボーリングのピンのところまで引きずられ、ゴールに投げ込まれるピー。その瞬間にボールが、たまころがしの手元に来る。たまころがしの背後に点灯する黄色信号。(少しは注意して進んでいるということか)ボールを手にするたまころがし。
そのもとにボッカ。彼女はどうしたと言う。たまころがしは言う。「いい重さ。永遠のマイボール。」すると、ボッカめがけてボールを投じてくる。よけるボッカ。ボールが当たった地点には赤い穴。ピンの癖に自分からよけるなとたまころがし。と、犬が襲ってくる。ボッカの篭手に噛み付く犬。蹴り飛ばすボッカ。たまこらがしの攻撃は続く。「落ちな。」とたまころがし。「弓矢があれば…。」とボッカ。すると「ボッカ!」と掛け声。顔は出しているが変な馬のコスプレをした男という言葉が言い得てそうな者が弓を投げてくる。受け取るボッカ。
「鳴り響け、僕のメロス!」
ボッカが弓を放つ。たまころがしに命中する。犬が赤い穴に変化し、その穴に落ちていくたまころがし。
弓を見て、自分のだと気付くボッカ。「間に合ってよかった。」とさきほどの男。「そんな笑顔ができるなら、もっと早く見たかったな。」とボッカ。「仮面のまま付き合うのが楽しくてさ。」とエランヴィタール。
「そうか、僕は馬鹿だった。」「彼がモンスターキングなんだ。」「忘却の旋律が、モンスターキングによって作られたの幻というのは、本当かもしれないな。」「僕にメロスの戦士を辞めろって言った。」「世界はもう平和になって、みんなが幸せになったから、それを壊すなって。」とボッカ。「それでどうするの。」とエランヴィタール。「子供を喰っている奴らの言うことなんて、聞いてらんないよ。」とボッカは言い、弓を鳴らす。するとエランヴィタールが光だし、背中から大きな羽が出現する。「あの時は、限界時間が迫ってたから、やむなく大気圏に突入したんだ。」とエランヴィタール。「分かってるって。」「穴の下で待つ、か。」とボッカ。「いくぞエランヴィタール。」エランヴィタールがアイバーマシンの姿となり、ボッカは乗り込む。またバイオコンツェルトと発動する。
赤い穴の中に突入するボッカとエランヴィタール。「明らかに罠だ。」「わかっている。」その先には白い光。
・砂漠とぽつんと残された廃れた戦車〜単に二十世紀戦争の名残か。それとも仲間を失ったボッカが疲れているということを表したいのか。
・二十世紀戦争〜ソロが言うには二十世紀戦争が起きたのはソロが前のモンスターキングを倒したときだとのこと。ソロが二十世紀戦争を戦いモンスターキングを倒し戦いを止めたのかと思いきや、前のモンスターキングが倒されたことでモンスターたちの統制が取れなくなったため二十世紀戦争が起きたのか。でも前のソロの発言、勝ってはいけなかったんだ、あの、二十世紀戦争はを考慮すると矛盾しているような。勝っちゃいけないとは、モンスターを束ねるものを倒してはいけないという意味で言ったのなら矛盾はない。
・ピー〜ソロが言うには自然と戯れ自由に生き、芸術品であり、自らの意思で志願する選ばれた者たちだというが、何を表しているのだろうか。彼女達の運命は美しくあるよう育てられ、そしてモンスターに喰われてしまうのか。それは自ら志願して芸能界のアイドル養成所に来て、パトロンがアイドルで利益を得てその本人を食いつぶしてしまうということか。あと前の乳搾りの意味は何なんだ。アイドルの魅力がおいしいということか。
・ボーリングのカット〜運命が決まった、モンスターの思惑通りと言うことか。
・エランヴィタール〜ここに来て人間の姿になるというのは何か意味があることなのか。仲間がいなくなってもアイバーマシンがいるということで人間となったのか。また、彼が翼を広げたのはどういう意味か。前にあったタイトル、天使でなくても持つ翼は、それほどの大義を起こすことと定義したが、また別に意味があるのか。ボッカがモンスターを倒しにいくと聞いてそれに協力するという意味で翼を広げたのか。
●宇宙から戻ってきたボッカが行き着いた大地は砂漠であった。そこでボッカが見る小夜子の幻影。その後ボッカはソロに再会する。質問するボッカにみみをかさずソロは話を進め、二世を倒して今のモンスターキングが三世を継承したとき二十世紀戦争は起こったことや、忘却の旋律は今のモンスターキングが作った幻だとボッカに言う。そして彼らがたどり着いたのは美少女牧場。それは少女達が美しく育てられ、最後にはモンスターに喰われてしまうという運命であった。ソロは自らの意思でそこにいる、この平和な社会を壊すどんな理由がある、モンスターキングが見せたいものがあるから穴の下で待つと言った。だがボッカは子供を喰う奴のことなんて聞けないと言い放ち、たまころがしに襲われたボッカを救い人間の姿となったエランヴィタールと共にモンスターキングであるソロの待つ赤い穴に突入する。
●少し前の話でアイバーマシンで大気圏に突入すると時間的に元の大地でない可能性があると言っていたが、果たして元の世界なのだろうか。元の世界ではなさそうなことを匂わせるものはないが。あと、何気にモンスター初撃破なボッカ。そして気になるのはピーの存在。現代のアイドル事情を皮肉るものと考えていいのか、そしてあそこまでパフォーマンスする意味までは読み解けないが。あとあとエランヴィタール。普通の人が見たら変態だと言うだろうな…。
(白・黒)忘却の旋律(白・黒)
赤い穴の内部、赤黒い空間を進むボッカ。と、たまころがし落ちており消えてしまう。モンスターでもこれ以上進めない場所だとエランヴィタール。忘却の旋律の実体がある場所はモンスターでも手を出せないと聞いたなとボッカ。まもなく到着だとエランヴィタール。前方の白い光が迫る。「カウント、5、4、3、2、1…」
時計。さまざまな時計がある。大量の時計が置かれており、宙に浮いているのも無数にある。(時がめちゃくちゃに存在する、後に分かることだが永遠の存在のモンスター・キングが、さまざまな時の側面を持っているということか。それとも地球上にはさまざまな人が時を持っているのに対し、ソロだけは時に関係なく若いまま生きており、だからいらだたしいのか。)
天井の巨大なガラスを破りボッカとエランヴィタールが突入する。ここはとボッカ。位置的にはほど地球の中心だとエランヴィタール。時計が大量にあるなか、中心に何かぽつんとある以外、何も置かれていない丸い空間がある。中心にあるのは棺桶。ボッカがその棺桶に手をやる。なかには忘却の旋律の実体。(顔は見えない、腕は腐敗していないようだが)ボッカは忘却の旋律を見つめる。
〜かつてツナギ爺さんは言った「…その幻の少女が本当にいる場所を探せ。そうすれば、人間はまだ負けない。」 ある人がこれはうそだよなといったが、モンスター・キングにここまで迎えられるほどの人ならモンスター・キングを倒し、モンスターも何とかできるということだと思う。
その様子を見ているジープに乗ったソロことモンスターキング、肩にはアルコトナイコトインコ。そして傍らには忘却の旋律。ボッカが忘却の旋律の実体を見たことで忘却の旋律はうつむく。「いいじゃないか、そんなに恥ずかしがらなくとも。」とモンスターキング。「いつからだ。」とモンスターキングに背を向けたままボッカ。「ずっと前さ。」「こんなところに普通の生身の人間が、生きていけるわけないだろ。」とモンスターキング。
モンスターキングの方を見て弓矢を引くボッカ。「それが答えか。」とモンスターキング。あの迷宮で石にならないのも道理だとボッカ。「そう、この方こそ、モンスター・キング・ソロモン・3世だ。」とアルコトナイコトインコ。だからソロなんだとボッカ。「いつも一人きりで歌ってるからさ。」とアルコトナイコトインコ。「一人?」とボッカ。「こういうことさ。」とソロは言い、忘却の旋律を抱き寄せ、胸に手を当てる。体をすり抜ける手。悲しそうな顔をする忘却の旋律。
「少年メロス同盟も滅んだ。これからの時代、平和を維持していくことが大切だ。」
「何が選ばれた者だ、あの生贄の少女だって、恐怖と絶望の中で、モンスターの犠牲になったんだ。」
「だれだって死ぬときは恐ろしいさ。」
忘却の旋律の元を離れ付近の時計に近づき、時計の針を回すモンスターキング。「見せたいものってこの棺のことか。」とボッカ。「いや違う。そこに立ってるじゃないか。」とモンスターキング。と、ボッカの近くにはドレス姿の小夜子。「…小夜子!」とボッカ。すると小夜子はボッカを見て微笑む。「小夜子!」と再び言い、小夜子に近づき、頬に手をやるボッカ。手は頬をすり抜ける。「君の力は、メロスの戦士を既に超え始めた。本物の月ノ森小夜子に会えないという君の思いが、その新しい忘却の旋律を描き始めている。」とモンスターキング。「まさか小夜子が、」「いや、彼女はまだ生きている。ほら。」
ある所にスポットが当たる。そこには鎖で磔になった小夜子。「小夜子!」とボッカ。すると先ほどまで見えていた小夜子が消える。
「でもね、生身の彼女はだめだ。本当さ。」
「彼女はやがて、君の目の前でどんどん老けていくだろう。」
「それを目の当たりにして、君の中の若さも失われていく。」
「なあ、そんなつまらない人生を選ぶのか。」とモンスターキング。
「女の子なんかに、本気になるなよ。」とアルコトナイコトインコ。
「そう、本当に惚れた女は、こうして理想として、永遠に見つめているのがいい。」
ボッカは弓を引き、小夜子を捕らえている鎖にめがけ矢を放つ。落ちてくる小夜子。受け止めるボッカ。小夜子を呼び覚まそうとするも返事はない。
「僕はね、君の言う正しい社会とやらが、どれほどのものか知りたいんだ。」とモンスターキング。「例えば、世界と彼女を天秤にかけたとき、君が…」とアルコトナイコトインコ言いかけて、モンスターキングと一緒に咳き込む。「どうするのかね。」とモンスターキングが言うがその声はアルコトナイコトインコ。それに気付いてばれたか、こいつの言葉はすべて僕の腹話術だ、「インコが本当に話すわけないだろ。」とモンスターキング。
「子供を犠牲にする社会は許せない。メロスの戦士はそう思って、戦っているだけだ。」
「だが、そのメロスも君で終わりだ。」「北半球を君にやる。そう、君もモンスターキングになるがいい。そうすれば、少しは世界というものが分かるだろう。」「モンスターキングは、寂しいんだ。」とアルコトナイコトインコの声。「君はよくやった。よく戦い抜いたよ。だから、この高みに来るといい。」「モンスターキングは永遠に若く、眠ることもなく、」「ソロ…。」と忘却の旋律。アルコトナイコトインコの声、
「このまま歳をとらずに生きていく。この残酷なまでの孤独が、」「君に分かるか!」
とモンスターキング。
畜生、と言いながら時計を倒す。ひとつもまともなのがない、「そうさ、力と支配。そして毎日、恋愛と娯楽と快楽と。」とモンスターキング。「犠牲になる子供の方が、まだ救いがある。」「僕の時間に終わりはない。」
「誰かひとりでいい、僕と同じ孤独を知り、僕を知ってくれるやつがいないと、おかしくなってしまいそうだ。」
とアルコトナイコトインコの声。「君は既に僕と同じなんだ。早くそれに気付け。」とモンスターキング。
「お前の孤独を知るものなら、彼女がいるだろ。」
「彼女は、理解のふりをしてくれるだけだ。」
「彼女は僕の理想だから。」
と、ボッカの背後にも忘却の旋律がいる。ボッカは彼女を見て、ここにいたら危険だと知る。ソロは言う。「悪いが、月ノ森小夜子は助からない。彼女はここで、君の忘却の旋律になる。」
「エランヴィタール。」ボッカのもとに来るエランヴィタール。小夜子をサイドカーに乗せ、バイオコンツェルトを指示する。危険だ、2人同時だと安全を維持できるのが数十秒になるとエランヴィタール。
「頼むよ、僕を本気で怒らせないで。」と悲痛な顔をしたソロは、ボッカに弓矢を向ける。
と、その前に立ち手を広げる忘却の旋律。「僕の理想が、なぜ僕の邪魔をする!」
「バイオコンツェルト!」小夜子にもバイオコンツェルトの効果が現れる。ここから脱出するボッカ。再び赤黒い空間。「20秒経過。」
「なんとか地上に出るんだ、こんな地底の闇の中で死ぬな、君は太陽の世界の女の子なんだ。」
後ろから矢。ソロがジープから変化したアイバーマシンで追いかけてくる。しつこく体当たりをしてくるソロ。「気付けよ、生身の女なんか乗せてるからマシンの機動性が落ちるんだ。」
小夜子をみるボッカ。
と、急に赤黒い空間から美少女牧場になる。前方からはピーたちがこちらに向かってモーと言いながら逃げてくる。そして再び赤黒い空間に戻る。(美少女牧場は実は地上ではなく赤黒い空間の内部にあったということか? だが圏外圏での夜空を考えればそうは考えにくいと思うが…。それとも美少女牧場を管理していたたまころがしが倒されたことで赤黒い空間に落とされてしまい、そこから逃げようとしてあのピー達なのか。)
距離を取るボッカ。「このまま逃げ切るぞ。」「了解。」
「ちぃ、」矢を放つソロ。ボッカはかわす。再びボッカと並ぶソロ。
しがみつく忘却の旋律を背にソロ。
「悲しいね、彼は、君のような幻だけが永遠の存在だと、まだ気付かないんだ。」
「太陽の下に出る。遊びは終わりだ!」
下から見える水面に光。
「通常空間にでる。」
海から突き出す二つの矢。
そしてボッカとソロは弓矢を引き合う。
放たれる2本の矢。
小夜子と忘却の旋律が、ボッカとソロそれぞれの前に飛び出す。
矢に当たる二人。
「小夜子…」
「ボッカ…よかった、また会えた」
「小夜子!」
矢に当たった忘却の旋律。
しかし矢は彼女の体を突き抜ける。
双方に手を伸ばすソロと忘却の旋律。
どこまでも幻影の忘却の旋律。
矢がソロに当たる。
「ああ、思い出せない…ほら、つらいときさ、いつも君が歌ってくれた、あの歌を…」
●ソロは二十世紀戦争以前にモンスターと戦い、旋律劇場にたどり着き、前のモンスター・キングを倒した。しかしそのことによってモンスターがさらに暴れだす危機に陥る。そして現れたソロの忘却の旋律。その忘却の旋律を解放すればモンスターを全滅させられるが、人間は自我のない猿人となってしまう。そうしたくなければモンスター・キングになり、モンスターを支配するしかいない。ソロはモンスター・キングとなることを決断した。その後二十世紀戦争が起こり、戦いに勝ったモンスターの支配が始まった。しかし、不老不死の体を得たモンスター・キングは、忘却の旋律という理想の幻影とともにいても永遠に孤独であった。そして彼はボッカを見極め、ほかのメロスの戦士を壊滅させ、最後に残ったボッカに自分とともに世界を支配しようと話した。しかしボッカは小夜子を忘却の旋律にさせないことを選び、ソロは負けることとなった。最後の言葉とは、自分の歌を歌っていたソロは、忘却の旋律が実体の時に歌っていた歌を思い出そうとした、つまり、自分の歌=自分の考えをを捨てたということか。
学校。弓の授業。
弓矢を引く少年。まっすぐな瞳。的に向かって矢を放つ。走る矢。それは的の真ん中を射抜く。手ごたえのあった少年。
「カオ!」そこには担任。「まだ分かっていないのか、弓矢は魂だと言ったろ。お前みたいな出来損ないは何年かに一度必ず出てくる。」
それを見て少年は背を向け、その場から立ち去る。
市長の部屋。「市長、いらっしゃいました。」「そうか。」
笛の音。扉が開き、中からリコーダーを口にしためがねかけた少年。
「ようこそ、いらっしゃいました。こちらい用意してあります。」壁が開く。
『二十世紀に、大きな戦争がありました。』
中には少女。
『それは、人間とモンスターとの全面戦争でした。』
笛の音に気付く少女。
『言葉では到底語りきれない激しい戦いの末、』
少女のもとに来るモンスター。
『勝ったのはモンスター達の方でした。』
めがねの少年をみる少女。うなずくモンスター。
人道りのなかを逃げる少女。「たすけて、モンスターに追われているの。」「たすけて。」少女を相手にしない人々。モンスターに背を向ける人々。
『月日は流れ、新世紀になりました。』
ゆっくりと進むモンスター。
『そして人々は、あのメロディーを忘れていったのです。』
「たすけて。」逃げてくる少女に気付く少年。ふと少年がその方向を見ると、橋の裏に立っているモンスター。
それに気付き、弓矢を放つ少年。
モンスターにあたるが、矢はすり抜けていった。
「朝からまたうっとおしい、」と、何かに気付くモンスター。
モンスターを狙う一筋の矢。
それを放ったボッカ。
『けれど、生きる戦いを投げ出さない者たちは、今日も自分達のメロディーを、奏で続けています。』
「あの、メロスの戦士、なんですよね。」
「やる気のある顔だな、荒野を突き抜ける目だ。」
さまざまな道路の柱が乱立する海沿いを走るアイバーマシン。
小夜子が言う。
「あ〜あ、普通の男と恋したい。」
「分かってる、メロスの戦士が増えるたびに、そいつに恋するかわいそうな子も増えていくんだよ。」
「はいはい、黒船さんが一人で戦ってたのは正解だな。」
「モンスター逃がしといて、すっきりした顔してんじゃないの。」
「今日こそ、けりをつけてやるさ、」
朝、まっすぐな道を走るアイバーマシン。
『走れ、』
『その厳しさを知りながら、なお本当の自由を求める者よ。』
『お前がたどり着くべきその彼方まで、』
『世界を貫く、矢のように。』