第2部 『白夜岬編』


夜。砂浜にうちよせられる波。廃れた人形が落ちている。白い月。白っぽい光を放つ灯台。

『20世紀に大きな戦争がありました。それは、人間とモンスターとの全面戦争でした。言葉では到底語りきれない激しい戦いの末、勝ったのは、モンスター達の方でした。月日は流れ新世紀になりました。そして、人々はあのメロディーを忘れていったのです…。』

急に灯台の光が赤くなる。赤く照らされる人形。赤に染まる月。赤で照らし続ける灯台。 人形を手前に、赤みがかかっている海の向こうから船が来る。規則正しく窓が並ぶアパート。すべての窓に人とカーテンの影。そこに赤い灯台の明かりが照らされると、みなが一斉にカーテンを閉める。灯台をバックに船が通り過ぎる。 灯台の側面には「へびはなび丸」と書いてある。最後にさらに赤く灯台に照らされる船。


『白夜岬』   ・  『モンスター・ユニオン』   ・  『君に届く声』


 第2部のおおすじ

ボッカは社会の矛盾、黒船の追跡、元凶と思われるモンスターを倒すため、小夜子とともに旅立つ。だが、ボッカの前に立ったのはモンスターではなくモンスター側についた人間、モンスター・ユニオンのエージェントであった。だが、エージェントにはつらい過去があり、その心をモンスターが突いたのであった。そして、モンスターのおかげで町は潤っていた。しかし生贄になる子供達はいる。ボッカは決意の元にエージェントを倒す。しかし、喜んでいる人はその時誰もいなかった。キツイですというボッカだが、必ず忘却の旋律の元に行くと決意する。その先には小夜子もいた。

今回の白夜岬編は、モンスターに支配された社会構造が描写されている。前面に立って人間を支配するというわけではないモンスター。子供を生贄として献上し、その引き換えに恩恵を受け、それを快諾する町の人々。町の人々の代表として、またモンスターに弱みを握られてそれに従う、モンスター・ユニオンのエージェントのみりさん。そして、今回ボッカが倒したのはモンスター・ユニオンのみりさんであった。つまり、モンスターを倒すために旅立ちを決意したボッカであったが、倒したのはモンスターではなく、その手先の人間であったのだ。
今回の話で特に印象があるのは、自分を貫くことの大変さである。今回ボッカは不正を正すとともに自分を貫いた。だが、それを喜ぶものは現れず、町の人から否定された。大多数の社会から否定されても自分を貫けるか、その意味があるか、今回の話ではそれがあまり見出せなかった。それは今後見出すことが出来ると期待したい。






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 第3話のあらすじ

街と海。そして先ほどの灯台、今は赤くない光を眺めることができる。ボッカはこの町に忘却の旋律のことを知っているかもしれない物知りの女性を訪ねて来た。いままで夜は2人部屋のホテルで小夜子と過ごしてきたが、もう金がないためアイバーマシーンの後部からなかなかでかいテントを出現させ、そこで寝泊りすると小夜子に言う。それが嫌な小夜子は、一週間ありがとう、あんたとはこれまで、私は私で商売で稼いでホテルで泊まるからと言って出ていこうとする小夜子。商売って詐欺だろとボッカは引き留めるが、小夜子は行ってしまう。小夜子が歩く道路には>>>が小夜子の進むのと同じ方向を向いている。反対車線には「急カーブ」の文字。

「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ」。その台詞中に写るのは道路の「↑駐車場」「↓出口」という文字。その脇にはホテル。バスが止まっており、そのバスからなんかしんないけど赤ちゃん、というかキューピーみたいな(大人ほどの大きさをし腹あたりに体を囲む桶を持っている)やつが順をなして出てくる。そいつらに向かって女性従業員(みりさん)はいらっしゃいませと挨拶を続ける。

ホテルにボッカが来る。その背景に大きな看板、「またのおこしをお待ちしております従業員一同」。宿をお探しかと聞いてきた男に、物知りの女性を知らないかと聞くボッカ。先ほどの女性従業員がオーロラを見るのはうちが一番だと自分の宿を勧めてくる。極地でもないのにオーロラかとボッカ。男に観光協会の理事長がそうかもしれないとボッカは行く。残った二人。「割り込みは困りますね、浜崎さん」と男。「私は浜崎さん」。と赤い目をした女性従業員。
洋館に着いたボッカは理事長に会いたいと言うが、アポなしではすぐ取り次げない。そのやりとりの最中、何体かの石像が瓶を手の上に持った噴水が映る。あきらめその場を後にする。街にいる小夜子。背景にはネオンの看板。早速男から財布を掏る小夜子。その小夜子の手をとる男性がナンパしてくるが、「警察に突き出すぞバカ大人!」と退ける。掏った財布がが大したことない事にあきれる小夜子の目に入ったのは紙袋を抱えた20代にはまだいってなさげな女の子。「うんうん、あれは持ってる〜。かもねぎちゃんー」。
灯台の白っぽかった光が赤に変化する。赤く染まる月。冒頭に出た人形も写される。アパートのすべての窓に人とカーテンの影。そこに赤い灯台の明かりが照らされると、みながいっせいにカーテンを閉める。赤く染まる街。携帯電話を耳にかざす女の子(今では珍しくなったアンテナ付で、アンテナの先端が白く光ってる)。女の子の後ろに写るのは、天使の像。周りには簡単な格子が備え付けられ、下から白いスポットライト当たっている。まるで閉じ込められてるかのよう。その背景に赤い街。さっそくその女の子から紙袋を掏る小夜子。そのままその場をあとにするかに思えたが驚愕する。現れたのは卵の形をした白い巨大な物体。それが空から来て地面に着地する。(宇宙探査機が月に着地する時のように、下に風を噴射しながらの着地)と、丸かった物体が翼を広げ始め、すごい勢いで翼が天使の像のに触れたかと思うと天使の銅像の首が綺麗に落ちる。翼を大きく広げ、咆哮する鳥の機械。たじろぐ女の子の手を取り走り出す小夜子。


っと、ここでキターーー。忘却の旋律的演出!これから2人が鳥から逃げるシーンとなるわけだが、そこでは不思議なというか、意味不明というか、忘却の旋律的演出としかいえない演出が入る。というか、自分がなんで忘却の旋律は神アニメだと言ったりあらすじをこんなに書いているのかというと、すべてはここにある。前にこのアニメを見たときになんだこれで終わっていた演出を、今回は演出を意図をしっかり考えておくことで、このアニメとはなんだったかを知りたいのだ。ってことでじっくり書いてみようと思う。


女の子の手を引き逃げる小夜子。追う鳥の機械。逃げる二人が画面の中心に常にいて、その背景は木々が右から左へと移動している。(いちいち書くことで混乱すると思うが、ようするに普通の逃げる演出ということを分かってもらえばいい。)追ってくる鳥の機械。と、背景が止まったまま、2人が逃げる光景が映し出される(上の2番目の画像、およびトップページの動画参照)。このシーン、実際に動いているのは2人が走る足だけで、先ほどと同じく2人は常に中心に画面の中心にいる。ようするに、走っているのに移動できていないない(現実の物理法則を無視した演出。それが忘却の旋律的演出!)周りに木々。逃げる2人の後ろにあるのは、別シーンで見て取れるのだが、針のない時計台、V・Y・\・?の部分だけが描かれている。
ここは考察を書いてみる。さてどんな意味か。全体が赤みがかっているのはモンスターがの脅威を表している。二人に距離をとってそびえ立つ木々は、モンスターに襲われている光景があっても距離をとる、この世界の人間のことを意味するのか。そして2人は逃げても中心から動かない。それはもうモンスターの手中にあるということか。ではその後ろにある時計台とは?アラビア数字で針のない文字盤。後ろにいることから追われている鳥の機械なのか。針がないとは、仕事をしていないということで、いずれ出てくるモンスター実物の指図で動いていない、モンスターユニオン(前に担任が言っていた、モンスターに従う人間の組織)が迫ってきているということか?あと画面構成が上下反射したカットもあるが、これがどういう意味かは思いつかない。
逃げる演出は続く。今度は前に出てきた建物に黒いカーテンがかかっているところで、赤くスポットライトが照らされると、追いかける鳥と逃げる2人の影が、各カーテン1とつずつに映し出される。カーテンの奥にいる人間は誰も襲うモンスターも逃げる2人も見ようとはしないということか。あと時計から鐘が鳴っているようだ。狩の時間ですよみたいな意味か。


と、ようやく、普通の演出に戻る。機械が今度は攻撃してきた。ところどころの服が切れ、倒れる女の子。2人は高いところに追い詰められてしまう。眼下には赤い街。「…誰も来ない、、やるのよ、あたしを…」と女の子。その台詞中に、さきほど首が取れた天使の銅像。と、赤い月の方向から白い矢。大きな翼で防御する鳥の機械。そして、白い光となって現れたのはアイバーマシンに乗ったボッカ。そして・・・

「鳴り響け、僕の、メロス!」

・・・BGMいままで、シリアスな音楽だったのが、忘却の旋律をイメージさせるバイオリンの音色に変わる。腕の袖の部分がもげ紋章が光り、矢を取り出しそこにかざすボッカ。それにより光りだす矢。弓に矢をセット。狙いを定める。背景は赤い。そして・・・

「フラァッーシュ!」

・・・放たれる矢。鳥にあたり、態勢を崩す。とその光景に道路らしき陸橋と、その手前の土の道に、自転車。先ほどの鳥が、最初に登場した時のように卵のようになったかと思うと、ロケットが発射して大空へ飛び立つかのように、多くの煙の吐きながら鳥が空へ向かうという、壮大な逃走の光景。「あれは、モンスターの手先か」とボッカ。「テバサキだけに手先ね」と小夜子。


(黒・白)忘却の旋律(白・黒)


Bパート。救出した妹はさきほどホテルの前で出会った女性の妹であった。妹をホテルを送ると、先ほどの女性がホテルに迎えてくれる。すると妹はまたまた先ほどの男性がいちゃつく、それを憂いな目でみる姉。その姉を疑い始める小夜子。シーンは変わりアイバーマシンを置くために地下の駐車場に来たボッカと姉。アイバーマシンを見てそこで姉はモンスターは機械なんかじゃ倒せないという。
赤い月。この話の最初に出てきたへびはなび丸という豪華客船が登場。画面真っ赤。中から赤い髪の少女。どこからともなく老婆の声。彼女はモンスターであり、生贄を捧げてしまった家族ら住人に銃を向けられる。でも攻撃が効かず、家族らは石像にされてしまう。
事件の真相を突き止めるためボッカはここの理事長(女性)に会う。そこで、モンスターが恐れる旋律劇場に忘却の旋律はいると教わる。だが彼女は、ボッカに言う。

「メロスの戦士だってこの社会は無意味だ。」
「お前はこの岬のモンスターと戦うつもりだろうが、そんなことをしても誰も喜ばない。」

ボッカはそこらに居た店の人に、この街で子供が犠牲になっているのを知っているのと聞くと、彼らは知っているようで、何で私たちに聞くの、とやな顔をした。
とあるどこか。「ビバ!モンスターユニオン!」多くの人が唱える。その頂上にいるのは鎧を着た女性がモンスターのお告げを言う。「ビバ!モンスターユニオン!」と掛け声が続く中で、ボッカは「メロスの戦士として戦うことを誰も望んでいないのかな」と言う。その傍らには忘却の旋律。「ビバ!モンスターユニオン!」最後に映るは叫ぶかのような石像。



 オーディオコメンタリーより

・キューピーみたいなやつ〜モンスターかと思いきや人形。つまり人間である。(それ以上は言及されないが)ここではただ機械的に観光客が絶えないこと、また桶を持っていることから温泉に入りに来たということを表していそうだ。そしてそれを一切気にしないみりさんは忘却の旋律の世界の常識(異形を気にしない一般人)を表している。
・少女に話しかける老婆の声〜これは彼女自身、もしくはもうひとつの彼女の怖そうな内面を表しており、軽い自問自答をしている。
・メロスの弓を発動したときに千切れる袖〜ボッカはそれを律儀に針でつなぎ合わせている。律儀だ。でも今後もこんなシーンはあったっけ。
・物語の各所に出てくる石像〜彼女に石像にされてしまった可能性を示唆。


 考察や感想

・「警察に突き出すぞバカ大人!」〜何気ない台詞だが、このお話における「大人」は重要なキーワードである。何かしら意味がありそうだが。
・鳥の機械が態勢を崩した時の橋とかの背景〜陸橋は1話の時と同じようにこの社会か、そして自転車は、乗っていた人がいたが同じように犠牲になった言いたいのか、もっと深い意味ではアイバーマシンに乗れない子供が犠牲になったということか
・姉との雑談中、シーンで時たま妹が喘ぐカット〜なんなんだ。
・ボッカと小夜子の「あっ、」「『あっ』って?」「あっだって、」「あっ…、」〜面白い掛け合い。
・少女の傘〜彼女にとって体を守るものとは何なのだろうか?
・銃を向けられた少女「いざ自分の子供が犠牲になると怒り出すの、勝手なこと。」〜悪いことに加担しても、自分の身になると起こる人間の皮肉だろう。また、少女はバットを投げつけられても少女はまったく微動だにせず。(別ネタだが、小説のR.O.Dでジェントルメンに五鎮姉妹が攻撃したときってこうゆう風なんだろうな)
・姉が鎧を着けたときの時の仮面〜こけしの仮面である。これから出てくるモンスターユニオンのエージェントも柄が違うがこけしの仮面をつける。(どっかのネットのコメントで「子消し」を表しているのではとも。)


 第3話まとめ

ボッカと小夜子は忘却の旋律の手がかりを求めて,、物知りの女性がいるといわれる灯台がある町に訪れた。そこで出くわしたのは少女を襲うロボット怪獣であった。襲われた少女を送るボッカらはその姉にホテルに案内される。ボッカは物知りの女性に会い、忘却の旋律は旋律劇場にいると聞くが、メロスの戦士なんて辞めろ、そんなこと誰も望んでないと言われる。

ボッカの旅がはじまる。どこか天然のボッカとそれにあきれる小夜子。そして登場、モンスターから逃げるときの、忘却の旋律的演出。これがとてもおもしろい、何が面白いかと言うと、本来ならただ逃げるシーンが写されるのに、それをせず、まったく関係なさそうなシーンを写してくる。その変と思えるシーンに衝撃を受け、それにより本サイトを書き始めた。自分は忘却の旋律を全話を1度は見終えているが、1回目のときは驚くだけで終わっていた。だが、今回見始め挑戦したいと思ったのは、このシーンが何を意図しているのかを解明することである。なので、ここまでいろいろあらすじを書き写し、考察のヒントとしている。



『ロボット怪獣がモンスターじゃないってどういうこと? 僕の敵はモンスターだけじゃないの。奴らはいったい…。次回、「モンスター・ユニオン」。鳴り響け、僕のメロス!』






波が打ち寄せられる砂浜とそこに落ちている廃れた人形。それらを照らす赤灯台。ビルに赤い光が照らされるが、どの窓も黒いカーテンで硬く閉ざされている。「あの灯台が赤く染まったとき、モンスターがこの岬に来てるんです。」「そして、子供を生贄にするんですね。」とボッカ。姉は、きゅうちゃんを特定して狙ったわけじゃないかもと言う。小夜子はこの前襲われたのはモンスターじゃなくって機械だもんねと言う。「白夜の影響で大勢の観光客が来るようになったって言うのに…」と若旦。話を変え姉は「近くを案内しますわ。」と言う。その姉の目は赤い。


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〜永遠に夜が明けることがない白夜岬。赤い月と赤灯台。忘却の旋律の手がかりを求め、物知りの女性を尋ね町を訪れたボッカは、ロボット怪獣に襲われた女の子を助け、その姉にホテルに迎えられた。


 第4話のあらすじ

オーロラは夜が一番綺麗らしい。白夜なのに夜と分かるのは、夜になると霧が出るので分かるらしい。ボッカが姉に、あなたは影がありますねという。すると彼女は白夜の町に影が出来ることはないと言う。
姉に面白い場所に案内すると言われ(モンスターの)豪華客船が止まっている脇に来たボッカが見たのは、前の話でモンスターに変えられてしまった大量の石像だった。姉は急に「ぴよぴよぴよぴよぴよ。」と言い出す。
小夜子はもうこの町を出ようというが、ボッカはモンスターがいるから残るという。そして小夜子にロボット怪獣を動かしているのはモンスターじゃなくってモンスター・ユニオンのエージェントが動かしていると教わる。
鎧を着た姉のところに「アルコトナイコトインコ」が来た。エレベーターらしき扉の上に「B2」と書かれている。モンスター様からだなと言う姉。残念ながら秘密通信だ、相手は同士「ディスカウントうりぼう」だと言う。インコがくちばしを鏡に触れると、鏡と同化する。チンとエレベーターの到着音がなり、先ほどの「B2」の表示のところに「うりぼう」と表示される。それによりディスカウントうりぼうが鏡に現れる。(ちなみに姉は「ミッドナイトひよこ」だそうだ。)ボッカに負けたことを突いてくるディスカウントうりぼう。通信を終えるとまたチンという音と共に「ひよこ」と表示。モンスター様が来てるのに連絡がないとはと、今はお前の後釜を探しているさインコ。「うるさい!」こけしの仮面を投げる姉。表示は「八当り」。この地位を失うわけには行かない。
ここから回想。(背景は小夜子がいた町なみ)長女だから婿取り娘だからと父親の声。人形を大事そうに手にしている女の子。成績がいい学生の彼女。(その服には「Kyoi」)これで男の子だったらと父親。彼女の手に持った人形が廃れている。話を来てくれた若旦。だが彼は妹と共に行ってしまう。温泉がインチキだとばれてしまった、お前れみたいな穀つぶしは嫁に行っちまえと父親。橋から人形を落とす姉。それを手にとろうとする謎の手。


(白・黒)忘却の旋律(赤・白)


Bパート。ボッカが歩いていると少女に出会う。「ヘビイチゴすき?」、それはどんどん甘くなる。また、しつこい男がいたから口づけしてあげたと少女は言い、どこかへ行ってしまった。「言い男では」と老婆の足が映る。「まだ早い」と少女の声。そして少し先にあったのは石像であった、そこで少女がモンスターであると気づく。小夜子と姉がバスの中にいる。小夜子の冗談にも姉はまったく動じない。「嫌な辞めればいいじゃん。」という小夜子に、「家を継がなくてどうやって生きていくのです。」と姉。回想。崖に先端に海を臨む姉。「そんなところにいたら危ないよ」と捨てられた人形を手に取る老婆の声。私とは関係なく幸せそうな景色が嫌だと姉。そして「もう二度と朝なんて来なければいいのに。」といった瞬間、あたりは夜になり、彼女の背に赤灯台がそびえたった。彼女はモンスター・ユニオンのエージェントとなり、町の住人を率いることとなった。そこから白夜岬は朝が来なくなった。それにより観光客が見込めたが、子供を生贄に出すこととなった。それを危惧する町の人。恵子、そんな子に育てた覚えはないのにと父親。「その名で私を、恵子と呼ぶな。」姉は言う。そんなことを思い出しつつ彼女はロボット怪獣の中に入る。
ボッカの部屋に小夜子が入ってくる。小夜子の腕輪と鎖、黒船さんの心が動いたとき反応するそうだが、最近は反応がないので心配だという。そんな小夜子に黒船さんも忘却の旋律を探している、きっと会える、だからそれまでいっしょに行かないか、そして、君がいてくれるとすごく助かると言う。小夜子はそう言ってくれるならもうすこし付き合おうかなと言う。
と、再び赤灯台が光り、ロボット怪獣が出現する。すぐさま一矢射ち込むボッカ。すると、ロボット怪獣の装甲が壊れたことで、中に姉が居るのがボッカに分かった。みんなが望んでいるから仕方ないでしょ、通りすがりの旅行者に分からない、あなたがいると迷惑なの、出ていけ。と言うと、再びロケット発射のように逃げた。「みんなが、迷惑するのか。」とボッカ。
アイバーマシンはおさえられてしまう。再び自分のしていることに不安を抱くボッカ。その脇には忘却の旋律。しかし、その場には、犠牲になった子だと、妹が廃れた人形に花をやり、手を合わせていた。



 オーディオコメンタリーより

・「ぴよぴよぴよぴよぴよ」〜彼女はひよこ型のロボット怪獣になれないと本音を言えない。普段の姿では本音を言えないことからこのように発言した。
・モンスター・ユニオンのエージェント〜組織の中でがんばっている人を出したかったそうだ。
・ダムガの烙印〜ダムガの烙印とはモンスターユニオンのエージェントの体のどこかにある烙印のこと。コメンタリーによるとそれはメロスの聖痕(ボッカが矢をかざすところ、メロスの戦士の証)のモンスター側のバージョンと言うことらしい。そして、それがあることでロボット怪獣を動かすことが出来る。


 考察や感想

・白夜のオーロラと霧の街〜オーロラとは虚構の美しい物を表しているのか。  
・アルコトナイコトインコ〜第一話にも居たインコ。モンスターのネットワークのメッセンジャーを請け負っている。だが口は悪く、よくけしかける。
・エレベーターの階数表示らしきところに「うりぼう」「ひよこ」「八当たり」と言う表示〜これも忘却的表現。こう絵に表して「八当たり」と描くところが、作中の人を馬鹿にしているようでおもしろい。
・回想〜親の、子供は男が良かったというプレシャーや、自分のことを分かってくれそうな若旦が妹にとられたことに対する不満。そしてついに、幼いころから大事にしていた人形を捨ててしまった。人形とは何か。人を信じる心だと思う。 ところで服の「Kyoi」の意味はなんなのか。脅威?
・「ヘビイチゴすき?」〜甘くないが、ずっと口に含んでいると甘い。最初はつまらないものだが、ずっとやっている病み付きになる…それは生贄の子供を表してはいなそうである。何なのか。
・少女と老婆がボッカについて「いい男では?」「まだ早い」〜ボッカは少女の目にかなわなかったが、惜しいようだ。それは石像にするにはということだろう。だがボッカは強くなく、まだ未熟だと思ったようだ。彼女は強いものを石像にしたほうが絵になると思ったのであろう。
・回想シーンに一瞬写る牢屋〜第一話にも出てきた首吊りと角突き骸骨。う〜ん雰囲気を表すものとしてわかるが、意図は分からない。
・対峙するシーン〜ボッカと姉がしゃべっている脇に黒い壁の隅々に赤が混じっている(もとは倉庫の壁でありそれを拡張演出していると思われる)。人間の心の黒い部分にモンスターがつけ込んでいることを表しているのだろう。


 第4話まとめ

赤灯台が光るころ、モンスターが現れ子供をさらっていくという。そして、ボッカは石像が立ち並ぶ場所に案内される、それはモンスターの仕業であった。だが前に襲ってきたのはモンスターではなかった。その正体は、襲われた少女の姉であった。

モンスター・ユニオンのエージェントであった姉。姉は自分とは関係なく幸せそうな景色が嫌になり、それにモンスターがつけ込み白夜岬が生まれた。そして多くの観光客が訪れ町は潤った。今回はじめて出てきたモンスター・ユニオンの存在は、人間の敵のモンスター側の人間である。姉はまわりの人々が嫌になったが、それを嫌と言えなかった。そのような人がモンスター・ユニオンのエージェントという、悪の側に加担してしまうことになる。



『僕がやっていることは無意味じゃない。子供を生贄にするなんて絶対に許せるもんか。だけど、この岬の人たちは…。次回、「君に届く声」。鳴り響け、僕のメロス!』






波が打ち寄せられる砂浜とそこに落ちている廃れた人形。海に捨てられるアイバーマシン。人形が途絶えることがないホテル。赤灯台。理事長の屋敷の噴水の石像。理事長に、モンスターのエージェントではなくモンスターの行方を聞きにきたボッカ。船着場には行ったのかいと理事長。そして理事長は再び警告する。「お前のしようとしていることは無駄なことだ。」「少くとも、この岬ではね。」


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〜ロボット怪獣に乗っていたのは姉だった。ボッカと対峙した姉は言う。何も知らない部外者は出ていけと。


 第5話のあらすじ

変わらぬ赤い町。ボッカが歩いている先に小夜子。「今度こそ発つんでしょ。」という小夜子。「やるべきことをやったらね。」とボッカ。姉がモンスターユニオンのエージェントということが小夜子は分かっていた。彼女によると、知っている奴と同じにおいがしているそうだ(後にわかるが小夜子の兄)。
ボッカが一人船着場に向かっていると、助けてくれモンスターに食われちゃうよと若旦が縄で縛られている。と、数人の住人に銃を突きつけられつかまってしまうボッカ。若旦は言う。「我々は今の生活を失いたくないんでね。」その光景をモンスターが見ていた。
ホテルのワンカット、石像がひとつなくなっている。モンスターに土下座をしている姉。その背景に先ほどなかった石像。この岬を白夜にする力をくれたことを忘れることなく、モンスターを崇拝していると姉。いい心掛けだと老婆声のモンスター。それがほんとうならねとインコ。少女が銅像に抱きついていると、銅像が人間の姿に戻り倒れる。いい少年だったのねとモンスター。船は出港する。灯台は赤色でなくなる。
ボッカを牢屋に入れる若旦。恋人の妹が襲われているんだぞと言うのに対し、彼女はもう襲われないと言う。でもほかの子供が犠牲になると言うが、モンスター・ユニオンのエージェントには逆らえませんと言う。ボッカは暗い牢屋に入れられているが、まだ窓からは光が差している。姉に、あなたがいるとみんな迷惑する、何も知らない部外者は出ていけと言われたこと、妹が次はあたしなのかな言ったことを思い出すボッカ。実のお姉さんに襲われていることも知らないのにと言うボッカ。
小夜子が町に居ると、妹がアイスを食べながら歩いてくる。姉に狙われてることは言わずに別の町に逃げた方がいいよと言う小夜子。お姉ちゃんに狙われているからでしょ、「あいつ」は親の期待を一身に受けていた。後に生まれただけなのに、と言い始める妹に驚く小夜子。あたしを襲ったら、それはあいつの負けだから。あいつが好きだった若旦も奪ってやった。それであたしを襲ったら、それは嫉妬ってことでしょ。あたしを殺せばいい、そして、嫉妬で一生苦しめばいいんだと妹。「ありゃ…、こりゃかわいそうなのはねえちゃんのほうか…。」と小夜子。


(緑・黒)忘却の旋律(黒・白)


牢屋の中で弓矢を引くしぐさをするボッカ(自分の意思を貫けるかということか)。そこに小夜子が来る。鍵と武器も持っている。小夜子のテクニックだ。だけどボッカと話しているうちに背後に若旦が居ることを気づかず、小夜子も牢屋に入れられてしまう。
小夜子がボッカのように妹が襲われてもいいのと若旦に聞くと、同じ返答をする若旦。だが妹が本当のことを知っているよと若旦に話すと、若旦は悲鳴をあげて行ってしまった。
「エランヴィタール!」海から飛び出し牢屋を突き抜けエランヴィタールが来る。乗り込むボッカ。「モンスターユニオンのロボット怪獣だけは倒す。」と小夜子に言いボッカは、牢屋を飛び出す。「おいおい、助けがいのない奴。」と小夜子。
モンスターが居ないのに赤い町。妹に迫るロボット怪獣。妹の前に出て弓を構えるボッカ。姉は、お前がいるから私に影が出来るのだと言い放つ。そしてロボットの怪獣の攻撃が始まる。と、アイバーマシンが勝手に動き出す。勝手動くなとボッカは言うも、言うことを聞かない。と、ロボット怪獣の攻撃によりバイクから転落してしまう。すると、ボッカの元に近寄ったアイバーマシンは目を光らせ何かを指示する。信じるよとボッカ。操縦をアイバーマシンに任せ、「鳴り響け、僕のメロス。」ボッカの放つ弓が、ロボット怪獣に突き刺さる。姉のつけていたこけしの仮面が壊れる。
灯台にひびが入り、倒壊する。「コケコッコー。」と声がし、白夜岬に日の出が到来する。
そこらじゅうから住人に石を投げられるボッカ。「メロスの戦いに俺たちを巻き込むな。」「自分がよければいいのかよ。」と彼らは言う。姉の元に来る妹。姉はみんな岬のためにやったの、ごめんなさい、ごめんなさい、と手を差し伸べる。すると、微笑む妹。が、廃れた人形を力いっぱい両側に引きちぎる。
一人砂浜を歩くボッカ。

「理事長の言うことは本当だった、だれもモンスターと戦うことを望んでなかった。それどころか、みんな僕のことを迷惑がっている。」
「もしかしたら、どこへいってもこんなふうなのかな。」
「やっぱりメロスの戦士が戦うことは、誰も望んでないのかな。」
ボッカの背にいる忘却の旋律もうつむいている。
「自分が決めて、選んだはずなのに、それをやり続けることを、ただやり続けることが、結構キツイな。キツイです。」
「でもこの道を選んだことを、後悔していない。」
「だって、僕にははっきり君の姿が見えているから。」
「だから、本物の君がいるところにきっと行く。」
「必ず会いに行くんだ。」
すると、
「うん、待ってる。」


忘却の旋律が声がした。ボッカは振り向くが、そこには姿は見えない。と、前には小夜子がいた。
小夜子を乗せて走り出すアイバーマシン。道の先には、朝の青空が広がっていた。



 オーディオコメンタリーより

・牢屋〜観光の町に牢屋がある。普通に見える町でも少しおかしい面を表しているという演出。
・「コケコッコー」〜これの意味は「ミッドナイトひよこ。」がにわとりになったということ。子供が大人になったという言葉は倒された時には沿ぐわない気がするが、姉が倒されたことで気付かされてことはあるのではないだろうか。
・姉と妹のラストシーン〜妹は人形を引きちぎる。この設定、実は脚本の榎戸さんは別案で和解を書いていたのだが、監督としては今は和解のタイミングでないと判断したらしい。


 考察や感想

・ボッカの戦闘シーン〜アイバーマシンをうまく乗りこなせないなど、ボッカは苦戦する。それらは自分がどんな力があり何が出来るのかを知らないという意図がある。そして、それでも戦うということは、モンスターと戦うことは決心していることを意図しているようだ。
・ボッカとその後ろに忘却の旋律がいるシーン〜声が聞こえて振り向くがいないということはつまり、実際にいる思ったらいなかったということ。ならボッカの後ろに忘却の旋律がいる時の意味は、ボッカがそう感じているということか。そして、忘却の旋律はいなかったがその後に小夜子が出てくるの意味深である。
・姉にとって妹はうらやましいのに、妹にとっては姉がうらやましく、さらには憎む対象であった。悲劇ですなぁ、これも親が悪いのであろう。だが親がこ のような風になったのは社会が悪いかもしれず、その社会になった原因は…ということで、原因は尽きない。少なくとも人は周り環境を変えづらい。最初に変えに行くべきは人の心か。
・「君に届く声」〜この意味はボッカの言葉が忘却の旋律に届いたということなのであろう。つまり人の決意は人に届くと言いたいのでは。


 第5話まとめ

モ ンスターを倒しに船着き場に向かうボッカであったが、若旦と町の人に捕えられてしまう。一方で妹は自分が姉に狙われていることを知っており、また姉に対し不満を持っていた。それを知った小夜子は姉に同情する。牢屋を抜け出し姉と対決、苦戦するも撃破するボッカ。だがその場には喜んでくれる人はいなく、それどころか街の住人に石を投げられた。自分の決めたことをやり続けることがキツい、それでも忘却の旋律が見えるから会いに行くくと言うボッカ。その道の先に小夜子がいた。

全話を通して姉がつらい立場に居たという演出が多かったが、妹も同じであった。そして、自分の決意の下に姉のモンスター怪獣を倒すボッカ。だが、不正を正したのに町の人々の反応は冷たかった。誰も喜んでなかったかにみえるが、この先、犠牲になる人を救った。それに妹の命も救われた。対岸の火事、人は実際に危機的状況に出くわさないとことの大変さに分からないものだ。ボッカは自分の決心を貫いたが、その結果に苦悩し、キツイですと言う。だがボッカは忘却の旋律が見えているから、必ず自分を貫くと言う。忘却の旋律とは何なのであろうか。やはり社会のあるべき姿、理想という意味ではないかと思う。



『ねえボッカ、あの女の子はメロスの戦士じゃないよね、アイバーマシンにも乗ってなかったし。』『でも、彼女は…。次回、「鼠溝谷」。鳴り響け、僕のメロス!』
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